藍染めの本質は「付着」。「藍」で「染める」と書くのに「染色」ではない不思議。

藍染めなのに染色していない不思議
藍染めとは、藍で染めると書きます。しかし、実のところ藍染めは染色ではありません。
「いや、染まっているではないか。藍染めが染色ではないのなら、一体何なのだ」と言う話ですが、藍染めは染色ではなく、製品への藍の付着です。つまり藍で製品をコーティングするようなイメージです。
「本建て」により染められた製品をまっぷたつに切ってみるとよくわかります。伝統的な「本建て」による藍染めは表面だけに色が付き、なかが染色されていないことに気がつくはずです。
もちろん細い藍染めの糸から染められ、染められた糸で折り込まれたものに関しては肉眼ではそれは確認できないでしょうが、既成のものに対して染められたのだとしたら、なかを覗いてみると表面だけ藍色にコーティングされています。
藍は本来水に溶けない
藍染めの世界では、水に溶けない藍をひとの力で無理矢理、水溶性に変えることを「藍を建てる」といいます。
時間をかけ、藍草を乾燥させ、醗酵させるとすくもが出来上がります。さらに、醗酵させたすくもを紅葉樹の木灰の上澄みである灰汁(あく)と混ぜ、練り込みさらに醗酵を促し、灰汁(あく)をたしていくことで藍は建てられます。
この藍建ては「本建て」と呼ばれますが、非常に手間や技術が必要のため、現代では化学の力により苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)や石灰、また無酸素状態にする為の還元剤を使うことで藍が建てられることが多いです。
「本建て」による藍建ては、自然の力を利用するため、藍が建つかどうかの保証はありません。手間も時間も管理も非常に面倒です。ひとつの藍を建てるまでに最低でも1〜2週間の時間を要します。
「化学建て」による藍染め
では苛性ソーダや還元剤などを使う「化学建て」はどうか。化学建てによる藍建ての方法は、少し乱暴に言えば、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)や石灰により強アルカリ性の溶液をつくり、コールタール由縁の成分で色を付け、溶液を無酸素状態にするための還元剤をつかうわけですから分量を間違えなければ誰でも、簡単に、思い通りの色を出すことが出来ます。
ただし一方で化学建てによる藍染めは副作用も激しいです。色落ちや色移りは当然のこと、独特なにおいも伴いますし、中にはアレルギー反応を起こす人もいます。化学式に表すと同じ無酸素状態の強アルカリ性なのですが、やはり自然の力により建てられた藍と、化学によって建てられた藍は、明らかに違うようです。
「本建て」により藍染めされた製品は多少の色落ちがあったとしてもとまりますし、色移りがあったとしても水洗いすればすぐにとれます。
しかし「化学建て」により藍染めされた製品は色落ちが続きますし、当然のように色移りします。そしてそれは洗ってもとれません。
不思議なものです。