伝統的な藍建てによる「正藍染め」と現代の化学的な藍建てによる「藍染め」

本日から正藍染めLOVEを更新していきます。
化学的な藍染めの一方、正藍染めとは伝統的な藍建てによる「藍染」のことを言います。つまり「蒅(すくも)」を「灰汁(あく)」で醗酵させる、伝統的な藍建て(本建て)による「藍染」のことを「正藍染め」といいます。
現在、巷では藍染めについて様々な見解がありますが、正藍染めLOVEでは日本の伝統的な藍染めを軸に、日本の伝統的な藍染めの立場で、藍染について、書いていきます。
もともと「正藍染め」なんて言う言葉は存在しなかった
どの藍染が正しくて、どの藍染が正しくないか。その捉え方は藍染を語る立場の人間によって大きくわかれます。
だからあるひとは、正藍染めはインド藍と人造藍をやっている人の生活を脅かすと言い、またあるひとは、インド藍と人造藍は正藍染めをやっている人の生活を脅かすと言います。
私は藍染を生業としている染師ではありませんので、中立的な立場から言わせてもらうと、真実は歴史を紐解いたところにあります。
もともと日本で行なわれていた藍染は正藍染です。それが幕末になるとインド藍が輸入され明治20年頃から急激に輸入が増えました。
さらに明治30年頃になると人造藍が輸入されてきます。そして藍染を生業とする多くの紺屋はこれにとびつくことになります。何故日本中の紺屋がこれに飛びついたのか・・・それは安くて便利だったからです。
醗酵に手間が掛かり、手入れも大変な日本の藍
日本の藍は、藍染めの成分である藍分(ランブン)が3~4%しかありません。また醗酵にも非常に手間がかかりますし、手入れも大変。
一方で輸入品はというと、分量さえ調整すればいいわけですから、非常に簡単で思い通りの色を大量に生産する事ができます。手間もほとんどかからず、誰でも思い通りの色を自在につくりだすことができます。
しかしそんな化学的な藍染めにもデメリットはあります。
においや色落ちの激しい化学的な藍染め
化学的な藍染めは、ちょっと染め液に浸すだけで思い通りの色を出す事が出来ます。一方でその副作用も激しいものとされています。
たとえば、代表的なもので言えば「におい」。化学的な藍染めは非常ににおうのです。また、色移りも激しいですし、色落ちもします。さらにいえば伝統的な藍染とくらべると色も悪い。
だから当時の消費者はそれを指示せず、「こんなものは藍染めじゃない」と使う事をやめてしまいました。
現代の藍染めはどうなのか?
現在の藍染めはどうか。
現代の藍染は日本の伝統的な藍染を行なっている紺屋はほとんどありません。そう考えると、歴史的な観点で申し上げると、手間もコストもかからない、現代の化学が生み出した藍染めに飛びついた紺屋は、日本の伝統的な藍染めである「正藍染」を駆逐してしまったと考えても申し分ないと思います。
もちろんこれは、どちらが正しくてどちらが間違っているという考え方に寄るものではなく、どちらが歴史が長いかによって考えるならば「正藍染」に軍配が上がるということです。
徳島産の藍染めについて
日本の藍を使い、手間とコストもかかる木灰の灰汁で藍建てをおこなうことで染められた藍染めは、今や日本中探しても数える程度です。だから藍の生産量も年々減ってきています。
藍の生産地として有名なのは徳島県ですが(世間で誤解されているようですが徳島県は「藍染め」の産地ではありません。「藍」の生産地です)、あとで述べますが、徳島県が行なったキャンペーンにより、徳島県以外でつくられた藍染めは何故か本物と言われなくなっているという現実もあります。
徳島県は「藍の産地」のはずがいつの間にか世間には、「藍染めの産地」として認知されているようです。これは大きな誤解ですので後々書いていこうと思っています。
現代の「藍染め」は、現代の複雑な社会環境により化学的に生み出された現代の象徴といってもいいかもしれません。